シリア軍は・・・そんなに負けない!~ゴラン高原(SPI/T誌)

今週初めは東京の例会に参加予定だったのですが、またも狙い澄ましたような緊急対応が入って、断念。千葉会に引き続いてのリタイヤで、結局、今月はちはら会例会しか参加できませんでした。5月になったら、流れが変わってほしいなあ~。

ともあれ、夜間は自分の時間が持てたので、(鬱憤晴らしの)ソロプレイ第三弾です。「中国農場」と同システムの「ゴラン高原」(SPI/T誌)です。ModernBattleシリーズについては、「中国農場」の記事を見ていただくとして、ここでは「ゴラン高原」に絞った内容で行きます。http://chiharakai2005.at.webry.info/200904/article_3.html

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舞台は、第4次中東戦争のもう一つの激戦地-シリア領ゴラン高原です。参加兵力自体は、エジプト軍の方が多いですが、同軍がスエズ運河沿いの広い地域に投入されたのに対し、シリア軍はほぼ全ての兵力を狭いゴラン高原に注ぎ込んでいます。イスラエル・シリア軍ともに、ほとんど後背地を持たないために、必然的に高濃度のガチンコ戦闘になります。

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通常の地上部隊は「中国農場」よりやや多い程度ですが、両軍の砲兵は1.5~2倍程度に増強されています。さらに、地対空ミサイルは、エジプト軍の倍以上!あまりに濃密な対空網がゴラン高原を覆っています。

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が、もっとも驚くべきことは、イスラエル空軍の対地支援能力。なんと、最大30火力までの航空機を、イスラエル軍は任意で投入できるのです。これは、シリア軍の戦車旅団5個分に当たる打撃力!まさに「空飛ぶ砲兵」です。

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展開は、ほぼ史実通りになります。序盤、圧倒的な戦力を誇るシリア軍が、戦線の中央部から南部にかけて進行し、惜しげもなく砲撃を撃ち込んで、拠点を破壊。長駆、ヨルダン川に向けて突進します(特別ルールで規定されています)。

対するイスラエル軍(IDF)はあまりに数が少なすぎて、満足に戦線が張れないため、北部から中央部にかけて、拠点を核にした半円形の防御陣を引きます。

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シリア軍は、西端から突破すれば勝利ですが、前提条件で3カ所以上の防御拠点を落とさねばならず、4ターン前後までこれにかかりきりになります。

と、わずか24時間で動員を行ったIDFの予備役(大量増援)が駆けつけ、反撃開始。シリア軍はSAMで必死の抵抗を試みますが、30火力の対地支援の前には、あらゆる攻撃は粉砕され、進行時と逆のルートで、IDFにシリア領に侵攻され、ほぼ全滅して、ジ・エンド。二度のソロでも、史実並みの展開でした。

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が、問題は、IDF反撃時のタイムスケジュールです。1ターンが12時間を表すために、実際の停戦が発効された時点までだと、32ターンもあります。IDFがこれをフルに使って着実に攻め上げた場合、ほとんど地上部隊の損害はなく、空軍だけでシリア軍を全壊させることができます。ゲーム的にも、中盤以降のシリア軍はただのサンドバック状態で、楽しみと言ったらSAMのdrだけ、という、なんともつまらない有様に。はっきり言って、競技ゲームとは呼べない状態でしょう。

そこで、史実でありえた状況を反映して、以下のオリジナルルールを導入してみました。

[ゲームのサドンデス終了]
・第10ターン以降の偶数ターンの終了時に、1d6して「1」が出た場合、次のターンでゲームは終了となる。

このルールは、ゴラン高原からシナイ半島への戦力転換が早まり、IDFがシリア戦線で防御態勢に入ったことを意味します。米ソ両国による停戦決議を恐れたイスラエル軍は、停戦発効前に有利な状況を作っておこうと、迅速な反撃を余儀なくされていました(第1回目の停戦決議を無視して、国際社会の非難を浴びているくらいです)。十分にありえた事態で、史実でもゴラン高原である程度、失地を回復した10/10以降に、戦力(特に空軍)を引き抜かれています。

ゲーム的には、中盤以降に、いつ終わるか、わからない状況を作ることで、あまりに有利なIDFの勝利条件を引き下げています。IDFにとっては、多少の損害も辞さない、決定的で迅速な反撃が必要になります。シリア側にとっても一方的な苦行が緩和され、敵のミスを誘って、一か八かの反撃も誘導できるかもしれません。

それでは、ソロAARをどうぞ。

[第1ターン]
10/6、ゴラン高原を守備する少数のIDF守備隊を、シリア軍の猛烈な砲爆撃が襲った。10月戦争(イスラエル側呼称.ヨム・キプール戦争)が始まったのである。度重なるモサドの警告を無視してきたイスラエル軍は、建国以来、初めてアラブ連合軍に後れを取ったのである。

満を持したシリア軍は、中央から南部で一斉にDMZを越えると、要衝の防御陣地に集中攻撃を加えた。1個機械化歩兵旅団が守る南部のRafidでは、大量の装甲車輌が全周包囲をし、猛烈な砲撃を見舞った(全40火力!)。それでもBrと大健闘をしたが、退路を絶たれたIDF守備隊は全滅し、シリア軍は一つ目の拠点を手に入れた。

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中央部では、維持不可能と放棄されたAhmediyaの拠点を、シリア軍の第9師団が無血で占領。さらに長駆、進入した3個戦車旅団が#1118の砲兵陣地を強襲した。これが落ちれば、シリア軍の突破を止めるものはない(前提条件を充当)-IDFは、稼働状態の全ての航空機をかき集め、地上支援に投入した。少なからずの機体が損害を受けたが(SAMで4VP)、果敢に突撃するスカイレーダーの活躍で、かろうじて防衛することに成功した。

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イスラエル軍は、さらに空軍の力を借りて、戦線の間隙に浸透してきた戦車旅団を、局地反撃で押し返し、どうにか円形防御陣を維持することに成功した。

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[第2ターン]
シリア軍は、一気に戦局を決めるべく、最西端の防御陣地-Naffakに、全力を持って攻撃をかけた。3個戦車旅団に10個砲兵隊(!)を加えた総戦力は、40火力!2/3の確率で陥落する危機だったが、IDFはここで決死の抵抗を示し、Brで死守したのである!その隣で突破を図った戦車旅団も、空軍の力で阻止し、IDFは貴重な時間を稼ぐことに成功したのである。

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すぐさま、西端から、動員を終えたばかりの予備役(増援)が投入され、空軍による支援で、増援ルートと翼端の安全が確保された。

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[第3ターン]
あきらめることを知らないシリア軍は、増援ルートを遮断しながら、再び、陣地帯の占領に賭けた。目標は、二度目のNaffak!投入火力も、またも最大の40火力!状況は前回と同様だったが、死にものぐるいのシリア軍の気迫が勝り、Exで多大な損害を出しながら、ついにNaffakを占領したのである。

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が、シリア軍の初期攻勢も、これが限界だった。最も危険な24時間を凌ぎきったIDFは、強力な機甲旅団を投入し、反撃に出たのである。対空ミサイルの嵐の中を果敢に突撃するイスラエル空軍が、敵後方の砲兵陣地を叩き、これを麻痺状態に。すかさず、機械化部隊が前進し、獲られたばかりのNaffakに逆襲!地上攻撃機と砲兵が弾幕を集中し、Naffakを奪還したのである。ガラリア湖方面の反撃も成功し、シリア軍は早くも防御態勢を余儀なくされた。

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[第4ターン]
完全に主導権を奪い返したIDFは、丘陵を利用して防衛線を引くシリア軍に対し、全面攻勢に出た。多少の損害は覚悟で、突撃CRTの使用である。敵のSAMで少なからずの損害を受けながら、空軍が全面的にバックアップし、連打を仕掛けた。かなりの確率で、Deとなるはずだった・・・のだが!

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一時とはいえ、無敵イスラエル軍神話を破ったシリア軍の抵抗が、確率論を吹き飛ばした。ほぼ最高コラムでの攻撃だったにもかかわらず、5カ所のうち、3カ所でEx!(いずれも、わずか1/6の確率!)各ユニットあたりの戦力値が高かったことも幸いし、なんと自軍以上の損害をIDFに与えたのである。

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人口の極めて少ないイスラエルにとって、この損害は大きな驚きとなり、国防大臣モシェ・ダヤンは一時、反撃中止も検討したほどだった。

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[第5ターン]
一線の兵士の奮闘で巡ってきた思わぬチャンスに、シリア軍が取った選択肢は、カウンターだった。戦闘後前進で深く突出した2個戦車旅団に対し、周辺から部隊をかき集め、包囲攻撃に出たのである。一部では、砲兵に戦線を維持させてまでの総反撃である。

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Kuneitra-Naffak-Kushniyeの三角地帯で巻き起こった凄まじい遭遇戦だったが、またもや、危機を救ったのは、イスラエル空軍だった。SAMによるVP損失を度外視して、孤立した戦車旅団に反復した地上支援を実施。敵の攻撃を撃退することに、成功したのである。

反撃失敗で態勢を崩したシリア軍に、IDFの再逆襲が敢行された。空軍支援の元で、入り組んだ戦線を巧みな戦闘後前進で分断し、最強の戦車旅団を含む2個ユニットを撃破。余勢を駆って、一部は非武装地帯まで突進した。

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[第6ターン]
敵の猛攻を受けたシリア軍には、組織的な反撃する余力は残されていなかった。敵ZOCで足止めを喰らった部隊で部分攻撃を試みるものの、突撃破砕射撃と空爆により、全ての攻撃はマイナスコラムに。幸いにして、Aeにはならなかったため、かろうじて戦線を維持している状況だった。


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一気に戦局を決すべく、IDFは全域にわたって、攻勢を強めた。敵の集中する中央部の丘陵には空軍支援の元で、正面攻撃を敢行し、シリア領へと逆侵攻した。南部では、再び、戦闘後前進が猛威を振るい、被包囲攻撃により、戦車・歩兵・砲兵の3個旅団が壊滅。ついに、防衛不能の突破口を開削することに成功した。

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[第7ターン]
もはや、戦線の構築は不可能と判断したシリア軍は、移動不能のユニットを除き、全力でシリア領への撤退を始めた。と、同時に、敵の侵攻で予備を解除された第3機甲師団が、南下をして敵の浸透に備えた。

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得意の運動戦に入ったIDFは、高機動力で逃げ遅れた敵を包囲殲滅しながら、シリア領深くに侵攻した。再西部の1カ所のみ、A1となったものの、それ以外の全ての戦闘に勝利し、3個砲兵隊を撃破。一部は、シリア領ゴラン高原の中央部まで、前進した。このターン終了時に、ついにイスラエル軍のVPが、シリア軍を逆転したのである。

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[第8ターン]
このまま、押されたら、最後の希望-イラク軍の到着が間に合わないかもしれぬ・・・3ターン以降、全ての攻撃を阻止され続けたシリア軍は、唯一残る、機甲兵力-第3機甲師団を持って、乾坤一擲の攻撃に出た。主攻勢を1カ所に限定し、4個戦車旅団と生き残った全砲兵を持って、敵の戦車旅団に包囲攻撃をかけたのである。当然のごとく、イスラエル空軍が地上支援を行ったため、希望はわずかに1/6だったが、シリア軍はその可能性に賭けた。しかし・・・転がるダイスは、惜しくも「2」。A1となり、逆に2個旅団が突出する形になってしまった。

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乱れた敵戦線に対するIDFの攻撃は、巧妙を極めた。空軍の一部と前進した砲兵群が、敵の防御砲撃を封鎖すると、CRTを計算し尽くした全面攻勢で、3個旅団を壊滅に追い込んだ。また、一部の機械化部隊は、得点源のNawaとHarrrahを占領。戦線後方のSAM基地を荒らし回り、空軍に多大の損害を与え続けた2個SAM部隊を蹂躙した。

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[第9~10ターン]
少なからぬ防衛部隊を失ったシリア軍は、再び、砲兵まで投入して、薄い戦線を維持する羽目に陥った。敵の破断点が近いと判断したIDFは、この戦争で2度目の消耗戦術-突撃CRTを使用し、一気に片をつけにいったのだが・・・またもや、確率を無視したシリア軍の奮闘が、イスラエルの完勝にストップをかけた。

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8カ所の戦闘の3カ所で、Ex!(1カ所では、あろうことか、Ax)。シリア軍の捨て身の反撃のExと合わせて、6個旅団が消滅してしまったのである。シリア軍の損害も同数に及んだが(SAMの壊滅を入れれば、10ユニット!)、IDFの攻撃は、前線戦力の不足で一時的に麻痺することになった。

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[第11~12ターン]
敵のdrに救われた形のシリア軍は、タイムリーに登場したイラク軍の増援を前線に投入し、陣地ラインを利用して、戦線を再構築することに成功した。

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無理攻めは危険と判断したIDFは、空軍の爆撃を集中して、攻勢を再開した。時間はかかるが、確実に要塞群を攻略していく戦術である。堅実に戦力を集中する作戦により、高火力による陣地攻略-戦闘後前進とZOCによる捕捉-空軍による敵反撃の阻止-シリア軍の自滅(Ae)と、徐々に流れが戻ってくるようになった。

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着実な前進により、IDFは、ついに敵の最終防衛線に到達した。しかし、この時、恐れていた国連の停戦決議が可決されたのである(オリジナルルールの停戦ロールで「1」)。

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[第13ターン]
停戦の発効まで、あと半日!IDFは、最後の死力を尽くして、Sasa陣地の攻略作戦に突入した。まず、VP地点のBaht Jinnを占領し、そのまま、丘陵地帯の戦車旅団を攻撃。D2により、敵の後方に回り込むことに成功した。右翼では、Tell esh Shamsの丘陵陣地を2個戦車旅団が強襲し、これを奪取。戦闘後前進により、敵砲兵の退路を遮断し、壊滅した。最後に、#2307に籠もる歩兵旅団を集中砲撃で叩き出し、敵の中央部を突破。完全に敵の防衛線を寸断することに成功した。

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IDFが占領した丘陵からは、逃げ場を失い、Sasa周辺に密集したSAM群が一望に見渡せた。まさに、次ターンに殲滅できるところまで、たどり着いたのである。だが・・・。

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ここで、ついに停戦が発効し、両軍の戦闘は終了となったのである。

[勝利判定]
シリア軍  …209VP
イスラエル軍…283VP
VP比率(I:S)=1.35:1
よって、シリア軍の実質的勝利。

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今回は、サドンデス終了ルールがうまく機能したので、それらしい展開と勝敗になりました。イスラエル軍の突撃CRTで分の悪いExの連発となったため、シリア軍の実質的勝利でしたが、普通の確率だったら、引き分けか、悪くてもシリア軍の限定的勝利だったかと思います。また、停戦がもう1日、伸びていたら、同様の可能性もありました。ゲーム時間的にも、「ただの作業」となる後半をオミットできるので、精神衛生上、いいはずです(笑い)。

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が、最後までやってみたいという、イスラエル軍プレイヤーもいるでしょうから、その方には、「停戦破り」のルールも入れてみたら、いかがでしょう。

[イスラエル軍の停戦無視]
・IDFプレイヤーは、一度のみ、停戦決議を無視し、ゲームを続行することができる(二度目の決議では、必ず、終了となる)。 ただし、その場合は、終了時の勝利判定レベルを、シリア軍に1段階有利にしなければならない。

あたりが、それらしいかも・・・。

バランスが悪いと前評判の「ゴラン高原」だったので、かなり警戒していましたが、ちょっとしたオリジナルルールで、どうにかゲームになりました。「中国農場」もこれも、手練れのイスラエル軍相手では、かなり厳しいでしょうが、ちはら会的には十分にOKです(笑い)。もし、対戦してみたいという奇特な方がいたら、いつでもインストしますよ~。もちろん、自分が「アラブの大義」で!!

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